ハップ・ショールの歴史と編み方を取り上げた新刊『Shetland Hap Shawls, Then and Now シェットランド・ハップ・ショールの今と昔』(2006年刊行)の取り扱いを始めました。
ハップ・ショールとは、シェットランド諸島で古くから、少なくとも150年以上前から編まれていた日常使いのショールのこと。
北の寒さを防ぐ防寒着として、また赤ちゃんのおくるみとしても使われていたというハップ(=「暖かな覆い」「暖かく包むもの」という意味の言葉だそう)は、シェットランドに同じく伝わる繊細でゴージャスな伝統ニット「シェットランド・ショール」とは違い、少し太めの糸を使ってざくざくと気軽に編まれているのが特徴のひとつです。
働く女性たちの日常着として編まれたハップは、その構造もとてもシンプルです。
「センター」と云われるまんなか部分は、基本的にガーター編み。そのまわりをレース編み(多くの場合「Old Shale」日本でいう藤編みが使われます)と縁編みで囲むという形が一般的でした。
簡単に素早く編めるように工夫された、まさに普段使いにぴったりなショールなのです。
カジュアルなガーター編みと、かわいらしいレース編みで編まれたハップのデザインは、現代の私たちから見ても魅力的です。
装飾的過ぎず、モダン過ぎない。機能的で美しいデザインといったらいいでしょうか。
そう感じる人は海外でも多いのか、近年、ハップ・ショールをアレンジしたパターン(Kate DaviesさんのA Hap for Harriet・2014年やJared FloodさんのQuill・2012年などなど)が次々と発表され、人気となっています。
地元の女性たちの日常着であったハップは、島外で取引される最高級のシェットランド・レースとは違い、記録があまり残されてきませんでした。
今回取扱いを始めた新刊『Shetland Hap Shawls,Then and Now シェットランド・ハップ・ショールの今と昔』は、そんなハップの知られざる歴史と編み方を、19世紀からの貴重な写真とともにひもといた一冊です(2006年刊行の本書は、ハップに光を当てた先駆的一冊でもあります)。
著者のSharon Miller(シャロン・ミラー)さんは、Rowan等で作品を発表しているイギリスのニット・デザイナーさん。彼女が古い赤ちゃん用のハップに出会ったことから、この本は生まれました(このハップのパターン・編み方も本書に掲載有)。
ニット・デザイナーらしく、ハップのパターン(編み方説明)も、たっぷりと収録。
ビンテージ・ハップから、四角形ではない変形ハップ、ヴィクトリア朝時代のハップをもとにしたパターン、レース部分の伝統的な色見本レシピ、伝統的な縁編みなど、ハップについて知りたい方にはもってこいの内容になっています。
また編むときのコツや「伝統的な編み方」「現代でよく使われる編み方」についてもきちんと解説されていて、うれしい限り。
長らく品切れで、入手困難だったこの本。
今回、ひょんなことから在庫が見つかったとのことで(シャロンの息子さんが倉庫で見つけたとか!)、急いで取り扱いを依頼しました。
詳しくはこちらの商品ページでも解説していますが、在りし日のシェットランド・ニッターたちの写真の数々だけでも興味深く、ニットに興味がある方はもちろん、世界各地の伝統文化、手仕事に関心のある方にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊です(オールカラー。テキスト英文。チャート・写真多数)。